一陸技を取得した。
何故
特にクリティカルな理由はない。周りに一陸技取得者が増えてきたというのと、部署異動で自由な時間が増えたので、まあそろそろ取るかくらいの気持ちで申し込んだ。基本的な動機は個人的な興味であるが、職種によって将来的に一陸技が必要になるかもしれないというのと、社内において一陸特(もともと持っていた)程度では何の価値もなく、スキルとして数えられないという動機も存在する。会社から奨励金が出るというのもある。
一陸技と一陸特は名前が似ているだけで全く別物である。操作範囲に天と地ほどの差があり、一陸技はあらゆる無線設備の技術操作が可能であるのに対し、一陸特は500W以下、30MHz以上の多重無線しか触ることを許されていない。これは国内の無線設備のほとんどをカバーするものの、テレビ・ラジオ局や外洋・宇宙に向けた無線局を運用することができない。個人的には大型と原付くらい違うと思う。もっとも、基本的には挙げたような職に就かない限り不要な資格である。
経歴
受験に際し参考にさせていただいた先人方に倣い、私の経歴を簡単に記載する。
2019/4 一陸特、三海特 取得 (学部の認定科目履修)
2021/3 大学院了 修士(情報科学) 半導体・光デバイス関連の専攻
2021/4 就職 通信系企業
2021/5 4アマ 取得
2022/3 電気通信主任技術者(伝送交換) 取得
2022/4-2024/3 研究職(半導体・光導波路関連)
2024/7 一陸技 合格
勉強方法
上記の通りもともと電通主任を取得していたため、一陸技の受験科目は無線工学B・法規の二科目である。
一陸技に限らず、無線系資格はそのほぼ全てが過去問ベースであるため、内容の理解よりも過去問のパターンを暗記してしまうことが先決である。つまり、アマチュア無線における完マルの概念を一陸技の科目で行えばよい。ひたすら過去問を周回し、条文の虫食いパターンとその正答を丸暗記することが重要である。
法規は上記の勉強方法が全てであるが、無線工学Bについては計算問題もあるため、加えて内容の理解が必要になる。もっとも、こちらもまずは暗記してしまい、覚えたあとで理解すればよい。知識を問う問題が半分程度あるし、計算問題に関しても正規の手段で計算せずとも正答を導き出せる問題パターンはいくつか存在するため、全ての問題を根本から理解する必要はない。例えば、問題文と正答となる選択肢の数字の組み合わせを一つ覚えておけば、本番で数字が変化していても、その比が同じになるような回答が正答となる問題がある。このあたりは以下のサイトが詳しいので、参考にされたい。(ただし、全てを網羅はしていないし、中には数値によって見当が外れてしまうものもあるので、参考程度にされたい)
周回方法
いくらでも机に向かえる学生と違い、社会人の過去問周回は大変である。
まず、一日にまともに使えるプライベートの時間はせいぜい1, 2時間である。日中は仕事のため時間を確保することが難しい。よって、通勤時間の有効利用がスムーズな学習のキーになる。とはいえ、満員電車で印刷した過去問を広げるわけにはいかず、過去問集は重い。PDF化したとしても、スマホの画面では小さくて不便なうえ、答え合わせは別のPDFを開かなければならず、非常に非効率である。
この丸暗記ゲーを効率よく行うため、私はムセンボーヤ!!氏のサイトで提供されている過去問アプリを使用した。
この過去問アプリでは過去問が体系的に整理されており、対象分野と対象年度・回、出題頻度の絞り込みが可能である。
特に使用したのは、解いた過去問の類似問題を別タブで解ける機能である。間違えた問題をその場で復習→集中特訓することが可能で、繰り返しによる記憶の定着に効果があった。「タテ」の周回中に「ヨコ」の特訓を行うことができるため、2次元的な過去問周回により非常に効率的な過去問周回ができた。
期間
法規に関しては一ヶ月くらい前から徐々にスタートさせたが、本格的(一日一時間以上)に学習を行ったのは二週間前くらいからである。主に通勤時間で上記の過去問アプリをひたすら周回した。二次元作戦が功を奏したのか、極めて効率よく対策を行うことができた。
無線工学Bに関しては一夜漬けである。法規の受験が終了してから過去問を回し始めた。というのも、もともと光デバイス関連の研究に携わっていた経験があり、RF回路やアンテナも少し齧っていたので、導波路や高周波回路についての部分は新たに学習する必要がなかったためである。このため、試験対策については過去問周回によるパターンの把握と計算過程の確認のみで済んだ。
当日
受験日は2024/7/9,10の二日間、会場はTOC有明だった。4アマのときは晴海だったので、初めてのTOCである。二科目免除とはいえ、法規と無線工学Bが別日に設定されており、しかも午後一からの実施であるため、2日とも年休を取得する必要があった。世の中一般的には年休を1日に収めたいと考える人が大半と思われ、このスケジュールは勘弁という人が多いと思われるが、私にしてみれば無線工学Bを一夜漬けにすることができるため、むしろ歓迎であった。
実施については特筆すべきことはない。試験開始時間の15分前から説明が始まること、説明の内容は良く言えば非常に親切、悪く言うとくどくて冗長なこと、開始後数十分すると退室可能になること、全て他の無線従事者試験と同じである。試験内容は8割以上過去問だったため楽勝であった。法規については退室可能時刻に退室、工学Bについても退室可能10分経過後くらいまで見直しをして出てきた。
合格発表・従免申請
試験からほぼ一ヶ月後の8/2、合否のメールが届いた。夕方くらいだろうと思っていたら朝8時半に来たので少し驚いた。結果はもちろん合格であった。その日のうちに従免の申請書を作成し郵送した。
ちなみに、一陸技受験後に3アマのCBTを受験しており、そちらの合格通知も届いていたため、同日に二通の従免申請を出すことになった。一陸技は関東総通だが、3アマの方は札幌出張時に受けたため北海道総通に宛てる必要があり、窓口で関東総通宛と北海道総通宛のレターパックを同時に出す変な人になった。
3アマの従免についてはお盆明けの8/19に到着した。免許日が前週となっており、北海道総通はお盆期間でも発行業務を行っているらしいことが判明した。
一方で関東総通はというと、従免が到着したのはなんと1ヶ月後の9/5であった。同日に差し出した北海道総通の免許がとっくに届いているにもかかわらず一切音沙汰がなかったので、郵便事故を疑い一度電話したほどである。
あとで調べてみると、関東総通のFAQでは1ヶ月程度で発行となっていた。従免の発行は通常3週間以内…とどこかで見たのだが、時期や総通によって微妙に違うのかもしれない。
あとがき
以上が一陸技(+3アマ)の受験記である。ネット上では一陸技は比較的難関よりの資格とされているが、過去問パワーで呆気なく取れてしまった印象があり、正直拍子抜け感は否めない。
一般人が享受できる一陸技の唯一にして最大のメリットは、他の無線資格受験時の免除科目の多さであろう。無線系の資格であれば無線工学〇〇は全て免除となる。実務経験により教員免許も取得できる。そのため、次の一手としては無線通信士が選択肢になりうる。中でも海上無線通信士については、三海通に合格すると一陸技との合わせ技で一海通にグレードアップするため美味しい選択肢である。航空通も選択肢になり得るであろう。航空通とn海通はどちらも一陸技を持っていれば法規・英語・電気通信術の三科目受験となるのだが、科目は相互に独立であるため、それぞれ個別に受験する必要がある。ただ、電気通信術に関しては全く同一、法規・英語も大枠は同じであるため、これらは続けて取得することでトータルの学習量を抑えることができる。試験日程を考慮すると、一陸技→航空通→三海通=一海通と受験するのが最短ルートとなる。私はこれに気づくのが遅れ、航空通を次のシーズンで受験することになってしまった。覚えゲーはともかくとして、実技が心配である。